2007年2月17日~18日の日程で、関東4チャプター(茨城チャプター・群馬チャプター・埼玉チャプター・栃木チャプター)合同の交流会が、茨城県の「古河市交流センター平成館」で開催されました。
2年目を迎えた今回は、幹事を栃木チャプター、サブ幹事を群馬チャプターが務め、埼玉チャプター会員をはじめ4チャプターから多くの参加者が集い、盛大な催しになったとともに、東北チャプターの門馬(もんま)氏も招聘され、広がりを感じるイベントとなりました。
それでは、2日間の模様をレポートします。
1日目(2007.2.17)
<基調講演>
コーチ業界の未来を描く
~世界のコーチング事情と国内の動向、そして私たちコーチが目指すもの
- 10:00am-0:00pm
- 日本コーチ協会理事 平野圭子氏
日本コーチ協会理事・平野圭子氏をお迎えし、これからのコーチ業界に求められることを中心にお話しいただきました。
平野氏によると、米国で開発されたコーチングも今ではグローバルに展開されつつあり、国際コーチ連盟(ICF)が認定しているコーチ・トレーニング・プログラムは米国のみならず欧州・アジアでも徐々に増えてきています。ICFの審査を通過した認定コーチの数も「全世界で5,000名を超えた」とのことでした。
ただ、認定コーチの増大とともに、コーチとしての質が問われる状況にもなってきており、連盟の定めた『コーチとしてのコア・コンピタンシー』を堅持することが、今、改めて重要な課題となっているとのことです。コーチとしての品質を高めるには「やはり『コーチングを学ぶ』『コーチングをする』『コーチングを受ける』という実践が第一義である」ことを強調されていました。
コーチ業界の展望について平野氏は、個人的な考えであると断った上で、「世界、特に米国においては、エグゼクティブがコーチをつけることはしごく当たり前となり、エグゼクティブコーチングが拡大するであろう」とし、反面、日本においては「コーチをつけるという文化がなかなか浸透しない状況も考えられるが、その代わりコーチングスキルを学びたいというニーズが増大するとともに、コーチをコーチングするという『メンターコーチ』の需要が広がるのではないか」と、米国と日本の文化の違いを踏まえた見解を示されました。
さらに、コーチング先進国である米国の養成機関は「単にコーチングのスキルをトレーニングするだけでなく、コーチングの背後に流れている理論(科学的アプローチ)を構築している」と指摘した上で、「日本コーチ協会としてもコーチング理論の構築には注目しており、大きなミッションとしてとらえている」と表明されました。
国際コーチ連盟の理事を務められた経歴のある平野氏であるだけに、世界のコーチング状況もふまえたグローバルな視点での講演となりました。
ランチタイム
- 0:00pm-1:00pm
平成館のレストランでランチを賞味。公共の施設らしからぬ豪勢なメニューで、皆さんご満悦の様子でした。
<パネルディスカッション>
それぞれのチャプター運営・活動の現状と課題、そして今後のありたい姿を語る。
- 1:00pm-2:00pm
- パネラー:茨城チャプター・西村チャプター長
- 群馬チャプター・加寿事務局長
- 埼玉チャプター・砂川チャプター長
- 栃木チャプター・門倉理事
- ゲスト:日本コーチ協会理事・平野圭子氏
- モデレータ:栃木チャプター・和久井理事
チャプターのこれまでの活動経緯とこれからの展望について、各パネラーから説明があるとともに、チャプター間で質疑応答を重ね、充実した情報交換会となりました。
埼玉チャプターの砂川チャプター長からは、「最近になって、新規会員が徐々に増えている」という現状の報告や、埼玉チャプターの今後の運営について「年間のテーマを打ち出した上で、それに沿った月例セミナーを企画していくべき」という課題を示すとともに、「4月から始まる次年度のテーマは『コーチのコア・コンピタンシー』を選定したい」と抱負を語りました。
<チャプター主催勉強会>
クライアントと良好な関係を築く
~「自分」を知ることで個別対応のコーチングに磨きをかける。
- 2:10pm-4:30pm
- 講師:群馬チャプター長・渡辺照子氏
- ((財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ)
勉強会は、群馬チャプター長であり、CTPシニアクラスコーチもつとめておられる渡辺照子氏を講師に、「自分を知る」というテーマで開催されました。
コーチングを実践するには、相手を知ることが重要ですが、だからこそそれ以前に大事なのは「自分を知ること」です。自分を知ることで、相手を知るためのさまざまなスキルを醸成することができます。
「自分を知る」ための切り口として、(1)コミュニケーションによるタイプ分け (2)学習スタイル (3)強みを見つける の3つのテーマを取り上げ、勉強会が進行しました。
いずれの切り口とも、CTPのカリキュラムに入っているため、コーチ・トレーニング・プログラムを受講している人にとっては目新しいテーマではないものの、渡辺氏のインタラクティブな進行によって、それぞれのテーマについて新たな学びがありました。
懇親会
- 6:00pm-8:00pm
1日目のみの参加者はここでお開き。名残惜しくも再会を期して散会しました。
宿泊者は部屋にチェックイン、休憩並びに入浴の後、いよいよ夕食を兼ねた懇親会です。何本もビールの栓が抜かれ、杯が重ねられました。料理のボリュームも満点で食べきれないほど。テーブルの至るところで談笑の輪ができ、笑いの絶えない和やかな雰囲気であっという間の2時間でした。
部屋に帰ってからもテーブルを挟んで座卓を円形に並べ、夜の更けるのも忘れてコーチング談義に花が咲きました。
2日目(2007.2.18)
<幹事チャプター主催特別プログラム>
坐禅とコーチング
- 9:00am-0:00pm
- 講師:栃木チャプター理事・武藤義弘氏
- ((財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ)
昨年の第1回交流会でも好評を博したため、今回の交流会もメニューに加えられました。講師の栃木チャプター理事・武藤義弘氏は、20年以上前から坐禅に取り組んでおられ、現在は指導者の資格をお持ちです。コーチングに取り組み始めたとき、坐禅やその背後にある教えと、コーチとして求められる素養・直感力というものが一致したそうで、宗教活動ではなくあくまでもコーチ道を極める一環として啓蒙活動をされています。
『坐禅』と『コーチング』、すんなりとは結びつかないのですが、講師の武藤氏から「坐禅は呼吸法。ゆっくりと息を吐くことで心の中に溜まった『我』も吐き出すことができる。したがってコーチングで大事な『ニュートラルに聞く』というスキルを養うことができる」との説明があり得心しました。
まずは「茶礼」。作法に基づいて菓子とお茶が配られ、武藤講師の動作にあわせて全員が一斉にいただきました。
続いて坐禅です。腹式呼吸の練習を行い、1本の線香が燃え尽きるまでの20分間、腹式呼吸をしながら臍下に手を組み、目を伏せて雑念を払いつつ時の過ぎるのを待ちます。自作の警策棒を手に取った武藤講師が背後に近寄ると、こちらは合唱しつつ肩に「ピシッ」と警策を受けます。痛みというよりも、覚醒するかのようなすっきりした感覚を受けました。
1呼吸1歩でゆっくりと歩いて周囲を1周する「経行(きんひん)」を間に入れ、都合2回の坐禅を行いました。
坐禅の後は武藤講師による講義。曹洞宗を開いた道元禅師が書かれたという「正法眼蔵(しょうほうげんぞう)」に納められている「現成公案(げんじょうこうあん/バランスのとれた完全行動)」の一節を紹介していただきました。
その中でも印象に残ったのは「人もし仏道を修証(しゅしょう)するに 得一法(とくいっぽう)、通一法(つういっぽう)なり、遇一行(ぐういっこう)、修一行(しゅういっこう)なり」。
「得一法、通一法」とは「真実の法をつかんだら、それは自分のものになる」という意味があり、「遇一行、修一行」とは「一つのできごとに出会ったときには、行動を起こしてそれをやり切ること」という意味があるそうです。「仏道」を「コーチング」に置きかえてみると、「得一法、通一法」も、「遇一行、修一行」も、いずれも相通ずるものがあります。
武藤氏の「コーチ業を営んでいくに当たって、その道に終わりはない。どんな艱難辛苦が待ち受けようと、逃げたり追いかけたりするのではなく、前後裁断してそれに真正面に向き合うことが大切なのではないでしょうか」という説法をいただき、厳かな中ですべてのプログラムを終えました。